不育症の病院選びのポイント ~信頼できる医師と一緒に一歩を踏み出すために~

昨日までマタニティグッズを選んでいたはずなのに、突然の流産でお腹から消えてしまった赤ちゃん。

妊娠をしても、また流産するかもしれないと考えると素直に喜べないことに悲しくなる。

一度でも流産を経験した人の辛さは、言葉で表すことが出来ません。もしあなたが不育症を疑うのであれば、良い病院、良い医師と共に治療にあたっていくことはとても重要です。

今回は不育症外来を開設する茗荷谷レディースクリニックの河合先生に、不育症の病院選びをテーマにお話しを聞きました。

2回流産しないと不育症検査は受けられないの?

 

一般的には2回連続で流産や死産を経験すると、不育症とされています。

しかし最近では妊活・不妊治療を受ける女性の年齢が高齢化していることから、河合先生のクリニックには1回の流産で来る人も多いと言います。中には、「絶対に流産したくない」と妊娠をする前に不育症外来を受診する人もいるそう。

「どんなに検査をしても、偶然起こる自然流産は全妊娠の15%に発生します。検査で全ての流産を避ける事は出来ません。

しかし妊活が高齢化している中で、高齢出産のリスクを考えると現代女性に時間がないのも事実。

一回目の流産で来院している人が増えているのは、早めに来院してリスクは全て潰したいと考える女性が増えてきた背景があります。」と河合先生は話します。

一方で不育症は一般的には2回の流産から、と言われていますが実際には学会では明確な定義がありません。その為3回流産しなければ検査をしなくていい、または不育症はそもそも存在しないという医師もいて、医師によって方針が異なることがあります。

れにより、インターネットで見る不育症の記事と医師の方針の狭間で混乱してしまう患者さんが一定数存在していると言います。

検査をすれば不育症は治るのか?

抗リン脂質抗体症候群や子宮形態異常の様に、明らかな原因がわかった場合には適切な治療を受ける事で流産の原因を取り除く事が出来ます。

しかし不育症の検査を受けても明確な理由が発見されず、原因不明とされる患者は65.3%に上るそう。また、不育症検査で見つかるのは「不妊症の原因」ではなく赤ちゃんが育たなくなる「かもしれない因子」です。検査を受ける意義は、今後妊娠をする上で不利な点がないかを知る事です。

「検査を受けて治療さえ受ければ、流産は避けられるのではないか。」そういう希望をもって不育症検査を考えてしまいがちですが、実際は検査をしても原因がわからない可能性があると認識した上で検査を受ける必要があるかもしれません。

不育症は、医師の見解にばらつきが大きい。

不育症は研究が難しい領域です。何故なら同じ赤ちゃん・同じお母さんで比較することが出来ないから。情報も少なく、医師の中でも難しい領域として認識されています。研究している人も多くない為、詳しい医師とそうでない医師の知識の差が激しい分野です。

その為、不育検査は多くの病院で行われていますが、検査結果のデータの解釈やその後の治療の点で病院によって大きなばらつきがあります。

開業医や不妊専門クリニック、大学病院など、様々な病院で検査を行っていますが、心配であれば担当の医師に不育症を専門としているか、あるいは最近の不育症の取り扱いについて情報を得ているか聞いてみてもいいかもしれません。

不育症を専門としている医師は少ないのですが、「詳しいよ」と言える先生であればまず大丈夫です。

不育症外来は何をするところ?現在の病院からの転院は必要?

不育症外来は、主に検査を主眼とした外来であることが多いため、多くの患者さんはメインの産婦人科病院や不妊治療クリニックなどと並行受診をしているケースが殆どです。

不育症外来で出来る事は主に3つのことです。

1)不育症検査

今回取材した茗荷谷レディースクリニックでは費用は全部で4~5万。自費診療の部分もあり、病院によってばらつきがあるため、自分が診察を受けるクリニックではいくら程度なのか、事前に確認をした方がよいでしょう。

不育症検査は、流産後月経が来てからの検査になります。一般的には、通院回数は血液検査を行う初診と、結果や方針をお伝えする2回。検査で異常があった場合は、再検査が必要になることもあります。

以降は、その方の必要に応じた処方のための通院、妊娠判明後の通院でOKです。ホルモン周期に関係なく出来る検査が大半なので、比較的早く検査は終了します。

2)精神的な落ち込みの軽減

医師の仕事はあくまで診察・治療ですが、不育症に特化しているので一般的な病院よりも患者さんの精神状態に配慮して診察が行われることが多いです。

例えば、河合先生の茗荷谷レディースクリニックでは、問診票に身体的な質問事項以外にも下記の様な質問項目を作り、なるべく患者さんの状況を配慮しながら治療を進めていきます。

 問診票例

ー 夫・家族、友人などによる現在までのあなたへの支援(相談や回答や態度)に対してどのように感じておられますか?

ー 近頃、以前は楽しめていたことが楽しめなかったり、物事に興味がなくなっていたりしましたか?

ー 過去の流産(死産)経験についてお尋ねします。あなたの今までの人生の中で、一番辛かったことをマイナス100点、一番楽しかったことをプラス100点とした場合、流産のお気持ちは何点ぐらいでしたか?

「診察時間は限られており、多くても20分位しかとる事が出来ません。しかし、患者さんに状況を細かくお話ししてもらう事で患者さんの表情が変わってくることがあります。

流産したときの状況について誰かにこんなに話をしたことはなかった、と言われることも多いです。また、妊娠をした場合には前回の流産の週数を乗り越えられたね、など意識的に声をかける様にしています。

ただ、声掛けはあくまで患者さんの状況を注意深く見ながら行っています。週数を乗り越えられたね、という声掛けがプレッシャーになりそうな患者さんにはあえて声掛けをしないこともあり、状況に応じて患者さんにふさわしい声掛けをする事を意識しています。」(河合先生)

3)出産までの適切なサポート・産科との連携

例えば、抗リン脂質抗体症候群が原因の不育症の患者さんが次に妊娠した場合に、高脂血症の患者さんへのアスピリンやヘパリン投与はいつまで続けるのか?出産直前まで続ける必要があるか?などの情報提供を不育症外来の医師がした方がいいケースがあります。

不育症外来を卒業した後でも、不育症の知識を持っている医師であれば、出産する病院と連携を取りながら妊娠を最後まで適切にサポートすることが可能です。

また望んでいる患者さんには、精神的支援の一環として、エビデンスは確立されていないが可能性のありそうな検査に挑戦してみる、などの試みをすることもあります。一通りの検査が終了しても、医師に不安を話し相談する事で、別の道が開けてくる可能性もあります。

不育症の80%は最終的に出産に至っている

この記事を読んでいる人の多くは、流産や死産の悲しみを経験し、次の妊娠に対する不安を抱えている人が多いでしょう。

しかし、実際には不育症の人の実に80%以上の人が悲しみを乗り越え、出産に至っているというデータがあります。

「怖がらないで、是非不育症外来を訪れてほしい。私たち医師は、皆さんが思っている以上に患者さんに対して、絶対にうまくいってほしい!と考えています」と河合先生がインタビューの最後に話していたのがとても印象的でした。

取材医師紹介

茗荷谷レディースクリニック 河合有希先生

群馬大学医学部卒業後、東京大学医学部附属病院等での勤務を経て茗荷谷レディースクリニックを開業。専門は不育症。患者の声に耳を傾け、寄り添う気持ちを大切にしています。受容力の中にもどこか芯の強さを感じるお人柄です。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする