子宮腺筋症の専門医に聞く、最新の治療情報③ 診断されたらやるべき事

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これまでの2回の連載では、子宮腺筋症のデータや治療方法について書いてきました。この記事では、実際に子宮腺筋症と診断をされた場合に、日常生活や仕事で気をつけなければならない事を考えていきます。

情報を集める

「子宮腺筋症の専門医に聞く、最新の治療情報①」で記載をした通り、子宮腺筋症はまだわかっていない事も多い病気です。治療の成果やトレンドに関する情報は今後より良い方向に変化していく可能性がある為、最新の情報をインターネットや医師から仕入れていきましょう。

治療計画を立てる

治療計画というと少し大げさですが、自分のスケジュール帳と照らし合わせていつ頃どんな予定が入ってくるか、1,2か月先まで計画を立てておくと安心です。また、生理の前後は日常生活や仕事に支障が出るケースが多いため、予め生理予定日を手帳に記入し、あまり体に無理のないように事前に調整しておくと気持ちも楽になります。

ホルモン治療だけの場合

ホルモン治療を開始した場合、最初の数か月はホルモン薬の効き目や相性を確認するために1か月に一回の通院が必要になるケースが多いので、予め手帳に通院予定日を記入し、大切な予定を入れない様にしておきましょう。(慣れてきたら薬の処方が3か月に1回程度になります。ミレーナは慣れてきたら6-12か月に1回程度です。)

また、余談ですがピルを使うと生理になるタイミングを自分で決めることが出来ます。(ピルのメリットを知り、ポジティブに健康と美をコントロールしよう! )重要な仕事が入っている、生理休暇を取得するのが恥ずかしい、などの場合には生理日移動をして土日に生理が来るように調整することが可能です。また、「子宮腺筋症の専門医に聞く、最新の治療情②」でも紹介した4か月連続服用が出来るピルであれば、生理自体を年に3回に減らすことが出来、生理日移動の調整も年に3回で済ますことが出来るので、生理日移動の手間自体も減らすことが出来ます。

手術を受ける場合

病院により違いますが、通院して血液検査、尿検査、MRI、心電図、胸部X線検査、呼吸機能検査、輸血に自分の血を保存して使う場合には自己血採取、などを入院前に行います。また、ホルモン治療を平行して行う事もあります。術後にも、経過観察やホルモン治療で通院が必要になります。医師に何回程度の通院が必要なのか事前に確認をし、予定を調整しましょう。

鉄剤を飲む

生理の量が多い場合には、同時に貧血になっている可能性が高いです。また、その状態が当たり前になりすぎて本人が気づかなくても、実は貧血になっている「隠れ貧血」は多いもの。疲れやすい、フラフラする、頭がぼうっとする、という症状がある人は貧血のサインです。

もし症状がなくても、血液検査の貧血の値(Hb10-11g/dL)以下の場合には既に貧血ですので、鉄剤を飲むようにしましょう。サプリでも医師から処方されたものでもどちらでも構いません。ビタミンCと一緒に飲むと、吸収率が高まります。

上司や同僚に伝える

女性のデリケートな疾患である為、伝える事をためらう人も多くいるのではないでしょうか。しかし病気が進んでくると、夜用ナプキンが30分持たないような月経過多になったり、骨盤痛で生理日以外にも痛みに耐えなければならなくなる為、周囲の理解は必要不可欠です。

まずは上司に病気について話し、通院や体調不良についての理解を求めましょう。 ここでのポイントは、悩みを打ち明けて上司に共感を求める場にするのではなく、上司・会社と「仕事の成果を落とさないようにするために一緒に考える場」であると認識する事。

1)通院や病気の症状で予定に穴をあける可能性があるが、スケジューリングしてなるべく仕事に影響が出ない様にしたい

2)具体的なやりくり方法を提案して、どのように乗り切るかを相談する。

この2点を伝える事が重要です。やりくりに周囲の協力が必要な場合には遠慮せずにお願いをし、その分結果で応えるようにしましょう。 上司との話し合いに、精神的な負担を感じる人もいるかもしれません。しかし限られた状況の中で仕事をしていく経験は、今後の出産育児や介護、副業などで人々の働き方が大きく変化していく中で、必ずあなたの力になります。

相談相手にも協力してもらう

周囲に迷惑をかけたくない、と頑張ってしまう人は多いのではないでしょうか。しかし、症状の重い子宮腺筋症は頑張りだけでは解決しない問題も多くあります。実際、生理の量が多くコントロールしきれない、痛みがひどい、などの理由で仕事を辞めてしまう人も多いのが現状です。

病気と長く付き合う上で、無理をしてばかりいてはいつか限界が来てしまいます。病院をキャンセルして仕事を優先しそうになった時や、痛みを我慢して仕事に行きそうになった時、「病院にいかないとダメだよ」「今日は休んでみたら」とパートナーや友人、家族に言ってもらえるように事前にお願いをしておきましょう。

治療方法は「医師と」相談する

ホルモン治療や手術だけでも様々な選択肢があり、またインターネットを見るとサプリや温活、様々な治療方法で溢れています。そして相談をする人の中には「ホルモン薬は体に悪いから使うべきではない」という人もいるかもしれません。特に、ピルに関しては性に奔放な一部の女性が使う避妊薬、という過去のイメージを持っている人が多く、服用を反対する人もいるかもしれません。しかし、あなたの体の状態はあなたにしか責任が持てません。相談相手に精神面でうまく支えてもらう事は重要ですが、治療方針においては、医師と共に二人三脚で相談して決めていきましょう。

長い目で付き合う気持ちを持つ

子宮腺筋症は、何か治療をすれば治るわけではなく、基本的には薬を服用しながら長い目で付き合っていく病気です。 長期間にわたる治療の中では、病気が急に悪くなることもあれば、薬を変えた副作用などで一定期間、体調を崩す可能性があるのも事実です。大きな変化があった時には心身ともに負担を感じることもあるかもしれませんが、この悩みはいつか軽減できる、という気持ちを持つことが大切。自分だけで解決せず、周囲にうまく頼りながら上手な病気との付き合い方を身につけていきましょう。

監修医師紹介

東京大学医学部附属病院 女性診療科・産科 講師 廣田泰先生

子宮筋腫・子宮内膜症・子宮腺筋症などの良性疾患~不妊症までを幅広く治療する女性ホルモンの専門家。同大学で着床外来、子宮腺筋症外来を立ち上げ。豊富なデータを基に、温厚な語り口でゆっくりと丁寧に患者に説明をするスタイルが特徴。

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