今更聞けない女性の健康経営:背景から失敗事例、最初に行うべき施策まで、全体像を把握しよう
2018年から加わった、健康経営における「女性の健康・保持増進に向けた取り組み」の項目。3期目を迎えるという事もあり、少しずつですが各社取り組みが進んでいます。
しかし一方で、「何から取り組んでいいかわからない」「取り組んではいるが成果が出ない」「そもそも、なぜ女性だけなの」といった声が多く聞こえてきます。
まだまだ健康経営において女性の健康が定着するのは時間がかかりそう、というのが現在の健康経営における状況でしょう。
このコラムでは、これから女性の健康経営に取り組みたい企業・改めて基礎を抑えた企業向けに、女性の健康経営の全体像と課題についてご紹介します。
女性の健康経営が取り上げられる背景
経済産業省によると、働く人の44%が女性と言われています。にもかかわらず、これまで健康経営では禁煙・メタボ・生活習慣病など、男性に多い健康課題ばかりがフォーカスされてきました。
一方で、女性の健康は月経・更年期・妊娠出産不妊・女性特有のがんなど、様々な課題があるにもかかわらず取り組み項目は全くなし。ある研究では、月経随伴症状などにより、年間で4911億円の労働損失が生じると試算されているにもかかわらずです。
少子高齢化による労働力不足や生産性向上が社会的な課題になっている今日。多くの人が働き続けるためにも健康経営を進化させていく中で、女性特有の健康課題にスポットが当たるのは自然な流れと言えるでしょう。
取り組むにあたり、知っておきたい基礎知識
男性の健康課題は加齢に伴って40歳以降に多くなってきますが、女性は年齢に関係なく、世代ごとに必ず健康課題が存在するのが大きな特徴です。
月経に関するトピックス
月経時に生産性が半分以下に下がる人は45%いるといわれています。
医学的には日常生活に支障が出るような症状は治療が必要といわれていますが、問題を抱えている女性のうち7割は病院に行っていないといわれています。
更年期に関するトピックス
生産性が半分以下に下がる人は46%いるといわれています。医学的には生理と同様に日常生活に支障が出るような症状は治療が必要といわれています。しかし問題を抱えている女性のうち8割は病院に行っていないといわれています。
不妊
仕事との両立が難しく、困難を感じた人の7割が退職・働生きやすい職場への転職などで職場環境を変えるというデータがあります。
子宮頸がん
最近は20~30歳代の若い女性に増えてきており、30歳代後半が発症のピークです。現在では有効はワクチンが開発されていますが、現在の働き世代がワクチン接種をする時代には、まだワクチンは普及していなかったため、多くの方がリスクを抱えています。
乳がん
女性のがん罹患全体の約20%を占めています。30歳代から増加をはじめ、40歳代後半から50歳代前半でピークを迎えます。
※女性特有のがんは他にもありますが、本記事では厚生労働省が定める「職域におけるがん検診マニュアル」に掲載されているもののみ掲載しております。
女性は妊娠出産・育児・女性活躍推進による管理職登用など、ライフイベントと健康課題が重なることも多くあり、どの年代でどのような課題が起こりうるのかを考慮し、どの層に対して施策を打っていくのかを検討する必要があります。
女性の健康、進めていく上での課題点は?
多くの企業がまず手始めにと、検診を始めています。しかし一方で、「検診率などの取り組みを設定したが、全く目標値に行っていない。」こんな声を多くの企業から聞きます。
これには主に2つの理由が考えられます。
1.女性自身が検査の必要性を認識していない
月経の例を見てみましょう。婦人科医療の現場では、日常生活に支障を及ぼす様な症状は治療対象であると考えられています。
しかし女性は幼少期、小学校・中学校・高校で行われる保健体育や性教育の授業で「生理は病気ではない。体を動かせば生理痛は治る」と教えられてきました。
女性にとって生理は我慢するものであり、検査をするものだという認識がそもそもないのです。
2.検診は女性にとっては苦痛を伴う
女性特有の検診は、婦人科検診であれば内診、乳がん検診であればマンモグラフィ検査など、痛みや精神的苦痛を伴います。また、通常の健康診断とは別に予約を取る必要があり、手間も時間もかかります。
女性の健康経営の最初の施策には、リテラシーの強化
女性の健康に取り組むのであれば、まずは女性本人にリテラシー教育をし、女性の健康課題が女性の体やライフステージにどのような影響を及ぼすのか、どうすれば解決出来るのかを理解してもらう必要があります。
また、管理職にも、女性特有の健康課題を持つ部下へのサポートやコミュニケーションの取り方など、風土醸成やマネジメントの方法についてのレクチャーを行う事も重要です。
そうして女性の健康課題に取り組む必要性を組織全体で醸成することが出来たら、様々な施策が有効になってきます。
その他の施策として重要なもの
相談窓口の設置
健康支援のための相談窓口のほか、メンタルヘルス、キャリア支援などのための相談窓口を設けるなど、不安や悩みに応えることができるように備える。
働きやすい環境の整備
両立支援、休暇制度、医療補助、テレワーク推進といった施策を展開することで、働きやすい環境づくりをする。
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