39歳、転職と妊娠が同時にやってきた。そこでもらった上司からの「おめでとう」。

少し前のニュースで国会議員が、自らが運営する保育園の職員が入社してすぐに妊娠したことについて「雇ったらすぐに妊娠、産休、違うだろ」と発言したことをご存知でしょうか。

マタハラではないかという議論が持ち上がった一方で、雇い主の心境としては仕方がない、という声が聞かれたのも事実です。

皆さんの周りにも、就職した後に間もなく産休に入る、という人もいるのではないでしょうか。

産み時 Vol.2。今回は転職直後に妊娠が発覚したMさんのケース。転職と妊娠、この二つの大きなイベントがなぜ同じタイミングでやってきてしまったのでしょうか。そこには、数年前から抱えていた「今の会社ではキャリアを広げられない」という苦悩がありました。

評価されるのは政治的に立ち回る人だけ。それに気づいた時に、転職を決意

転職をしようと決めたのはもう4年も前のこと。このとき年齢35歳。

これまで、自分の時間の多くを仕事に費やしてきて、その生活は嫌ではなくて、楽しくすごしていました。仕事も勿論、結構頑張りました。だけど、全然評価されない。周りを見てみると、評価されるのは政治的に動いている人ばかりという状態に嫌気がさしてきて。

そして、時間がないとできない物量・質を求められる仕事を、これからも続けられる気がしないと思い、転職活動を始めました。

これまでも何回か転職はしてきたけど、今回の転職活動はちょっと悩みました。

なぜなら、35歳、既婚、子なしだから。

子どもは絶対にほしい。そろそろ年齢的にも妊娠するには限界かも。子どもができたら、いまみたいな働き方はできない。それを思うと、安定した仕事を選んだ方がよいのかな。

でも子どもができる保証もない。そしたら、もっとキャリアを積むために、自分の志向に合わせて、チャレンジができる、ちょっとハードな環境に行った方がよいのかな。

そもそも妊娠を視野にいれているのに、転職活動して大丈夫かな・・・

そんなことを、誰にも相談できずに活動をしていました。

子どもができる・できないによって、選ぶ道は全く逆になると想定していたせいで、中途半端な企業選びになってしまい、面接でもちょっと弱気な発言しかできなくて。そんな中でも1社内定をもらいました。

だけど、子どもがいる・いない議論は自分の中で解決したわけではないので、その内定を受諾するかどうするかの意思決定もできず。

どうしようどうしようと迷っているときに、なんと妊娠が判明。その内定は辞退して、そのときの職場に残るという選択をしました。

「妊娠=内定は受けられない」、と思っていたので。

残ると決めた職場で出産・復職。退社後も電車内・帰宅後まで続く仕事

そして、出産・育休を経て、復職。年齢は37歳になっていました。

復職してみたものの、やっぱり働ける環境ではない。子どもがいるとこれまでのように、時間を自由に使うことができない。だけど、会社から求められるのは、上司への形式的な報告業務なども含めた膨大な量の仕事と責任。

子どもが体調を崩して会社を休むと、自分の仕事が全部ストップ。仕事がどんどん遅れていく。周りのメンバーも自分の仕事に必死で誰かをサポートできる余裕なんてない。

在宅勤務もできず、会社にいる時間の中だけで、周りと同じ物量をこなさなければならない理不尽さ。

PCが持ち帰れないので、退社すると、SNSを使っての業務連絡。そんな生活の中で、私もいつの間にか勤務時間の概念がなくなり、外部への連絡など退社後でも電話でできる仕事などは勤務時間外にまわして業務をなんとか進めるようになっていました。そうしないとやりくり出来ない状態でした。(もちろん、帰宅後に業務をしたとしても評価はされない)

育児をしながら働く母親たちは、こんなに大変な思いをしているのか、、、と、これが今まで聞いてきた「育児と仕事の両立が大変」という言葉の裏にある、働く母親たちのごく普通の姿なのか、、、と思う一方で、はたしてこれが、時間制限のある社員の働く姿として、本当に正しい姿なのか?という疑問も湧いていました。

私だって、環境が許せば頑張りたい。でも、時間制限ができると今までのように仕事がこなせない。子供の発熱で、突発的に休まないといけないことも出てくる。ハードに働くのが当たり前だった会社で、元々は量をこなす仕事も乗り越えていた私が、できないことが増えて、当時の上司も時間に制限ができた私を扱い辛かったのではと思います。

1人目の出産自体遅かったものの、もう1人子どもが欲しかった私は、この環境で、2人目を産んで戻って来れる気がしなくて。結果を出すことよりも、物量をこなすことがまず最優先で、その上で評価されていく会社で、これからもずっと時間の制限のある自分がキャリアを広げていける気がせず。

このアンフェアな環境に次第に憤りを覚えるようになり、再度転職活動開始を決めたのでした。

転職も第二子出産も、40歳の壁が迫ってくる

このとき、明確に第2子がほしいという気持ちがあったので、このタイミングで転職するのか?できるのか?と迷いながらスタートしたものの、もうこの会社で仕事ができる気がしない(したくない)、そんな気持ちが自分の背中を力強く押してくれました。

もうひとつ、「転職の年齢」としても、40歳になる前にしなければ、選択肢がどんどん減っていくということもわかっていたので。

子どもも仕事もラストチャンスかもしれない、どっちも諦められない、そして、どっちも実現したい。微妙な年齢だなぁと思いつつ。

転職活動、前回との違いは、会社選びの軸が明確だったことでした。

第1は、自由度がある会社かどうか。例えば、リモートワークができたり、フレキシブルな業務時間になっているか。

第2に、ダイバーシティが浸透しているか。つまり、育児・介護・女性・障がい、いろんな人・ライフステージに対しての理解があり、その配慮がされているか。ずっと配慮してほしいという意味ではありません。特に、育児・介護などは、ライフステージのある時期だけは、配慮がないと厳しいけれど、その時期を乗り越えれば、また普通に(時間の制約なしに)仕事ができる。そういう、いたって当たり前の考え方が、組織内で当たり前の話としてなされているかどうか。

第3に、任せてくれる会社か。もう、とにかく無駄なことをしている時間がないので、結果さえだせば、あとは全て任せてくれるか。これは、昔からの志向でしたが、時間に制限ができると、いかに効率化して成果を出すかが、余計に大切になっていました。

自分の志向は整理できたものの、育児中、つまり、時間制限があるので(私の場合、朝は早くても構わないが、夕方は17時までしか働けないという条件)、そんな私と会ってくれる企業は、以前ほどは多くはなく。自分が選ぶ企業の顔ぶれも、前回とはちょっと変わっていました。

時間制限つきという看板があることで、「契約社員でどうですか」と言われたり、暗に「この量できますか」と試されたり。その度に凹むものの、反面、そんな会社はこちらから願い下げ!とも思っていました。

転職活動開始はしたものの、これまた時間制限があるので、家族に協力してもらいながら、そうは言っても、家族に負担をかけすぎないように活動していたので、数社しか受けられず。ほんの数社受けて、1社からオファーをもらい、その会社に入社することになりました。

在職していた会社が「良い会社」であれば、必要なかった数年間の葛藤

第1子の育休から復職した後、転職をすると決めてからは、妊活はせず。

30代後半で、意志をもって妊活しないのは、すごくリスキーで、怖かったです。でも、活動中に妊娠が発覚したら、どこも受け入れてくれないだろうと思っていました。

転職と妊娠のバランスを考えながらの活動はプレッシャーしかありませんでした。

当時いた会社が、働く母親である自分にとって、「良い会社」であれば、こんな葛藤を抱えずに、過ごせたのにな、と残念に思います。

そして、いま、転職して半年。時間制限のあるわたしでも、すごくやりやすい環境と、配慮の中で、とても自由に仕事ができています。そして、以前よりも成果をあげられています。

転職後すぐの妊娠。ダイバーシティの浸透している会社で言われた「おめでとう」

さらにもうひとつ。転職して間もなく、第2子の妊娠が発覚しました。「出来たらいいな」とは思っていたものの、年齢を考えても、本当に驚きの出来事でした。

これまでの経験から、入社して早々の妊娠、周りの目も怖く、また育児休暇を取得する権利はないかもしれないとオドオドしていました。ネットで調べても、「転職間もなくの妊娠、そして退職」のケースも多く目にして、「はぁ、どうしよう・・・」と。

しかし、上司に報告した際にまず言われたのが「安定期まで体を大事にしてね」という言葉。同僚への報告時も、誰一人、曇った表情にはならず、「おめでとう」と。

ついついわたしからは「入社間もなくすいません・・・」とお詫びをしてしまうけれど、返ってくることばは「おめでたいことなんだから、あやまってはだめ」という言葉。

多くの会社で妊娠をセーブしている人がいる、そうせざる得ない社会になっている。それが今の日本の多くの会社の現状です。

この日本社会が、私の今の会社のような考えをもつ国だったら、女性たちはもっと自由に、キャリア選択ができるのではないかなと思います。

産休まであと少し。第1子のときは、「復職」は恐怖でしかなかったのに、いまは、「復職後も楽しみ」にかわりました。復職後も少しずつでもいいので新しいことにチャレンジしてみたいと思っています。「妊娠」と「転職」を意識して4年。やっと落ち着ける会社に就職できたなと、ほっとしています。