【子宮内膜症の専門医に聞く③】これからの妊娠、不妊治療での注意点

既に子宮内膜症の診断を受けている人は、これからの妊娠の可能性や不妊治療のプロセスについて不安を持っている人も多いのではないでしょうか。

事実、子宮内膜症患者の約50%は不妊とのデータも出ており、不妊には大きな関連がある事がわかっています。

この記事では、これからの妊娠において気を付ける事、知っておかなければならない事についてお伝えしていきます。

(医療監修:東京女子医科大学 産婦人科学教室 教授 熊切順先生)

妊娠率は30歳から40歳で10%低下

子宮内膜症に関連した情報の前に、まず女性の妊娠率や妊娠継続率が年齢と共にどう変化していくのかを知りましょう。自然妊娠は妊娠率の統計を取る事が難しいため、不妊治療におけるデータを参考に説明をしていきます。   (出典:一般社団法人日本生殖医学会

出典:一般社団法人日本生殖医学会(ETとは胚移植の略)

赤の線グラフ(妊娠率/総治療)を見てみましょう。妊娠率は30歳で約25%。それが40歳では約15%まで下がると言われています。

皆さんはこの数字をどう捉えたでしょうか?

「不妊治療をしても、30歳でたった25%なんだ」と捉えるかもしれません。

一方で、「40歳でも不妊治療さえすれば15%は妊娠出来る」と捉える人もいるかもしれません。

いずれにしても、30歳前後ではほぼ変化のなかった妊娠率が35歳以降で下降線をたどっているのがわかります。

流産率のリスクは30歳から40歳でほぼ2倍に

紫の線グラフ(流産率/総妊娠)を見てみましょう。

妊娠希望の女性は「妊娠がゴール」と捉えてしまいがちですが、勿論妊娠はゴールではなく、その後の妊娠継続・安全な出産・子育てと続いていきます。私たちは、妊娠率だけではなく、年齢と共に変化する流産率についても知っておくべきでしょう。

流産率は30歳で約20%。これだけでも十分多い、と感じる人は多いのではないでしょうか。実は流産とは一般的な健康女性にもかなりの頻度で起こる事です。周囲の人に流産の事実を伝える人は少ない為あまり知られていませんが、実はこれだけ多くの女性が流産による悲しみを経験しているのです。

そして、40歳になると流産率は40%とほぼ倍に。多くは胎児の染色体の異常(加齢そのものが染色体異常の発生の原因)が原因で流産が起こります。流産は現代医療では食い止める方法はほぼありません。私たちが流産を回避する為に出来るただ一つのことは「より早く妊娠する」事だけなのです。

子宮内膜症は生理の度に悪化する

さて、上記の説明で年齢と妊娠・妊娠継続に関することを書いてきました。子宮内膜症では、上記に加えて加齢による悪化について考える必要があります。

子宮内膜症は、子宮内膜(生理のもと)が体内の臓器に付着し、炎症を起こすことで発生します。

つまり、生理の回数を重ねれば重ねるほど(=年を重ねれば重ねるほど)症状が悪化していきます。悪化すると、諸症状の進行だけでなく、体内では卵管内の癒着や子宮環境の悪化が起こり、妊娠・妊娠継続どちらにも支障をきたしてきます。

また、【子宮内膜症の専門医に聞く】既に診断されている人が知っておくべき事 ①でも記載した通り、性交痛によるセックスレスを招く可能性もあり、そもそも妊娠にトライしにくくなることが考えられます。

不妊治療における注意点

子宮内膜症を原因とした不妊の場合、手術による子宮 周辺の環境改善(癒着や、卵巣のう腫の切除)や、体外受精などを行う事によって妊娠率の向上が望めます。しかし、勿論不妊治療で100%妊娠を希望出来る訳ではありません。

また、不妊治療に使用される排卵誘発剤は、エストロゲンを補う働きがあります。エストロゲンは子宮内膜症の増殖に関連があると言われており、排卵誘発剤を使用する事で更なる子宮内膜症の悪化を招いてしまう可能性があります。

ワンポイントアドバイス                                                                                        卵巣のう腫の手術を受けるには病院予約に数か月かかります。また、子宮筋腫の手術と一緒に行う場合には一定期間妊娠許可がおりないケースもあるので事前に医師に確認しましょう。                                    一方で術後は、卵管の通りも良くなる為、妊娠しやすい期間と言えるでしょう。少し時間はかかりますが、うまく手術を利用すれば、妊娠しやすい時期を狙って妊活をすることが可能です。

妊娠を望む場合には、パートナーと一緒に早期のライフプランを

これまでの説明で、子宮内膜症の人の妊娠は「早ければ早いほどいい」という事はお分かりいただけたのではないでしょうか。

不妊は「産まれた時から不妊か」「不妊ではないか」ではなく、時間の経過と共に体が少しずつ変化し、静かに不妊になっていくものです。だからこそ、なるべく早めにライフプランを立てることがとても重要です。

中には「今は仕事が忙しい」「パートナーが積極的ではない」などの理由で先を見通して計画を練る事が難しい、という人もいるかもしれません。しかし、そのような答えの出ない先送りは、あなたの大切な20代・30代の時期を年単位で奪っていきます。

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時間は取り返すことが出来ません。いくらパートナーの非協力を嘆いても、仕事の忙しさを理由にしても、一度不妊になってしまった体を元に戻すことは出来ないのです。

産み時のタイミングは、答えのでない非常に難しい問題ですが、それでもこの問題から目をそらさず、意識して妊娠計画について考えるようにしましょう。

例え年齢が高くても、可能性は十分にある。患者さんは皆、前向きに治療に取り組んでいる

・きちんとした治療を継続し、子宮環境をなるべく良い状態にしておくこと。

・可能な限り早期の妊娠計画を立てる事

・不妊治療についても早期にスタートする事

この3点にしっかりと取り組むことで、仮に年齢が高めのスタートだったとしても子宮内膜症のハンデを乗り越えて、多くの患者さんが妊娠・出産しています。

「年齢が高い患者さんでも、決して状況を悲観していない。治療や妊娠に対してとても前向き。診察室では熱心に質問してくる。」と熊切医師は言います。

監修医師紹介

東京女子医科大学 産婦人科学教室教授 熊切順先生

内視鏡手術で実績がある順天堂大学内視鏡チーム出身。「子宮内膜症は難しく、とても取り組みがいのある病気。表層的な知識だけでなく、うつ病や性交痛による不妊の可能性など、様々な知識を多角的に伝えていきたい」。プライベートでは家族とキャンプに行く家族思いのパパ。