【子宮内膜症の専門医に聞く②】ホルモン薬治療や手術で気をつけたい事

前記事(【子宮内膜症の専門医に聞く】既に診断されている人が知っておくべき事 ①)では、意外な子宮内膜症の症状や、主治医の選び方などについてお話しをしてきました。今回の記事では、ホルモン治療薬との上手な付き合い方や、手術時に気を付ける事について書いていきます。(医療監修:東京女子医科大学 産婦人科学教室教授 熊切順先生)

基本的には、ホルモン薬を飲み続けて進行を抑えることが重要

既に広く知られている事ですが、子宮内膜症は根治療法が子宮摘出しかない為、基本的にはホルモン薬を飲んで進行を抑えることが重要になってきます。定期的に通院をすることは働く女性には負担が大きいですが、薬を継続して飲むことは非常に重要なので必ず通院するように心がけましょう。

低用量ピル・・・内服薬。生理痛や月経過多、生理不順に効果的。最近は4か月を上限として生理を止めることができるピルが商品化されており、これを利用した場合には生理の回数を最大で年3回までに減らすことができます。

その為、生理の症状で悩む頻度は圧倒的に軽減。他のホルモン薬と同様に副作用があり、ピルの場合には特に血栓症への注意が必要です。ピルには他にも生理日の移動や美肌効果があります。

ピルについては「聞いたことはあるけど、詳しくは知らない。」「副作用が心配」という人も多いのではないでしょうか。あまり日本では普及して...

うまく付き合っていくと非常に便利な薬です。慣れてくると、3か月程度の連続処方が可能ですが、40歳以上の女性には慎重投与となります。

ディナゲスト・・・40歳以上でピルを卒業した人に多く処方されている内服薬。不正出血の副作用がかなりの確率で発生することがわかっていますが、通常出血の頻度は薬を飲み続ける事で徐々に減ってくるので、我慢できる程度であれば長期使用が可能な薬です。

但し、子宮が明らかに巨大化している場合には、大量出血のリスクがある為、副作用については医師と相談して進めていきましょう。

ボンゾール・・・現在の子宮内膜症の治療薬はピルやディナゲストが中心。ボンゾールは少し昔の薬です。しかし症状がひどく、低用量ピルやディナゲストで効果が出ない様な場合に、ボンゾールを使う事で良くなることがあるそう。

副作用が強いので処方する薬の量を調整して低用量にするなど  (200㎎/1日)注意が必要ですが「子宮内膜症について詳しい産婦人科医であればボンゾールの効果が高いことを知らない医師はいない」と熊切医師はいいます。

GnRHアゴニスト ・・・偽閉経療法と呼ばれている、生理を止める治療です。点鼻薬と月1回の注射薬の2種類があります。6か月を超えて連続投与が出来ないため一時的にしか使う事が出来ないのですが、効果が最も強く完全に生理をとめ、一時的に症状を落ち着かせることが出来るのが大きな特徴。

症状が著しくひどい場合に、一時的に使用し心身の安定を図る狙いで使用されることが多いです。また、不妊治療に際して子宮内膜症の痛みに耐えられずに治療が進まない場合に、一時的に症状を改善させたのち不妊治療を再開する事で、不妊治療の負担を軽減出来る場合があります。(一時的に病変は縮小しますが、治療をやめると病変は元の状態に戻ります。)。更年期症状や骨量減少などの副作用があります。

薬が効かなくても悲観しないで

子宮内膜症の治療薬はいずれもホルモンをコントロールする薬の為、最初は吐き気やむくみ、不正出血などの副作用をもたらします。しかし、多くの副作用は2,3か月で消滅することが多いので、まずは焦らずに様子を見てみましょう。(※突然の足の痛みや手足の脱力、胸の痛みなどは血栓症などの重篤な副作用の危険があるので、その場合にはすぐに病院に行きましょう。服用前に必ず医師の説明を受けてください。)

また、ピルにも複数の種類があり、成分がそれぞれ微妙に違う為、Aのピルが体質に合わなくてもBのピルに変えたら副作用の症状が消える、と言いう事もあります。

「昔と違い、今は様々な治療薬があるので、選択肢は本当に多くなった」と多くの医師が口をそろえて言います。私たちは、様々な治療の選択肢がある時代に生まれてきたのですから、悲観せずに前向きに治療に取り組んでいきましょう。

子宮内膜症に詳しい医師からは様々な情報が受け取れる

付き合い方に少しの工夫が必要なホルモン治療薬。【子宮内膜症の専門医に聞く】既に診断されている人が知っておくべき事 ①、で説明した通り、子宮内膜症に詳しい医師を主治医に持つことはとても重要。このような医師は学会などの論文発表から絶えず新しい情報を吸収して診察にあたっています。

その為、学会で有効性が確認されている、既存の薬の裏技的な服用方法を提案してくれたり、また新薬が出た場合にも多くの知見の中からメリットデメリットをしっかりと提示し、個々人にあった最適な治療薬を提案してくれるのです。

しっかりと情報を持っている医師を主治医に持つことで、私たちはより多くの選択肢を得ることが出来るのです。また、その数ある選択肢の中から自分にあった最適な方法を主体的に選ぶことが出来るのは、治療における大きなメリットです。

もしも手術になったら、腹腔鏡手術がお勧めな理由

痛みが酷い、癒着の程度が酷い、卵巣嚢腫が大きくなり捻転の恐れがある、という場合に手術の可能性がある、という事は既に医師から説明されている人は多いのではないでしょうか。

「子宮内膜症で手術が必要になった場合には、出来れば腹腔鏡で手術をしてほしい」と熊切医師。その理由は主に2つあるそうです。

術後の癒着の影響を最小限に抑えることが出来る

開腹手術は切開範囲が広いため、癒着が広範囲に渡るというのは勿論ですが、それと共に見逃せないのが手術中の腹部の乾燥や手で臓器を触る事。

これらの行為が腹膜の機能を低下させ、それにより体に元々備わっている癒着防止機能が低下する事で更なる炎症・癒着を引き起こすのです。腹腔鏡は小さな穴の中から手術器具を挿入して手術を行う為、乾燥や触診の影響を受けることはありません。

より広範囲の病巣を観察し、適切な手術を実施する事が出来る

開腹手術の場合には、子宮の裏側を見て、どのような病巣があるのか確認することが出来ません。しかし、腹腔鏡の場合には、細長い手術器具をぐるっと子宮の裏側に挿入することが出来る為、より広範囲の病巣を観察してから手術をすることが出来ます。

これにより、開腹手術では観察の難しい病変に対して適切な処置をとる事が出来ます。

目で見るより美しく確実なモニター画面

子宮内膜症の手術はmicro surgery (=微小の病巣を切除する細かい手術)とも言われ、とても繊細で難易度の高い手術。

小さい病巣を発見して確実に切除するには、医師が自らの目で直接確かめる開腹手術より、高精度のモニターに鮮明に術野を映し出しながら行う腹腔鏡の方が、より正確に病巣を切除することが出来ます。

手術の病院選びにあたって気をつけたい事

子宮内膜症での腹腔鏡手術の実績を確認するのは勿論ですが、子宮内膜症の卵巣嚢腫の手術の場合には術後にホルモン治療を継続する可能性が十分あります。

子宮内膜症による嚢腫で手術を受ける人向けの記事です。卵巣嚢腫の再発率は5年で30%。将来の妊娠や生理痛軽減の為には、手術と同じくらい、術後の...

その為手術件数だけでなく、病院のHPにしっかりとホルモン治療に関する治療方針などが記載されている病院を選ぶと安心です。また術後にも定期的に受診できる病院か、あるいは術後は短期間で転院を推奨している病院か、という点についても事前に病院に確認をしてみましょう。

しっかりと病巣を取れば、鎮痛剤の使用は10回以上飲んでいた人でも2,3回に激減

熊切医師の調査によると、手術後には、激しい生理痛は確実に軽減することが出来るそう。統計を取るとピーク時の痛みは7-8と変わらずですが、鎮痛剤の使用は2,3回に激減。鎮痛剤で生理痛が十分コントロールできる様になります。

監修医師紹介

東京女子医科大学 産婦人科学教室教授 熊切順先生

内視鏡手術で実績がある順天堂大学内視鏡チーム出身。「子宮内膜症は難しく、とても取り組みがいのある病気。表層的な知識だけでなく、うつ病や性交痛による不妊の可能性など、様々な知識を多角的に伝えていきたい」。プライベートでは家族とキャンプに行く家族思いのパパ。