流産・早産率70% 仕事と産み時の狭間で「想定外」人生ゲームの行方とは

女性なら誰しも一度は「いつかは子供を産んで、理想の家庭を作りたい」と思ったことがあるのではないでしょうか。しかし、希望通りに妊娠する事、希望通りの人数の子供を設けることは、そう簡単な事ではないのが現実です。今日は「二人目不妊」で葛藤する今日子さん(仮名、39歳)のエピソードをご紹介します。

30歳で第一子を出産、順調な人生

今日子さんは26歳で結婚後、夫婦2人の生活を謳歌し30歳で第一子を出産。実は今日子さんには子宮内膜症・子宮腺筋症の持病があったのですが、不妊症の検査の過程で妊娠が判明。「少し心配していたが無事子供が生まれ、不妊症ではないことが分かった」と安心した今日子さん。

保活では苦戦したものの1年半の育休を経て、無事仕事にも復帰。忙しいながらも、夫婦で協力しながら充実した日々を送っていました。
※出産後、育児と待機児童で1年半のお休み

33歳、第二子を考えた矢先に会社が合併

そろそろ第二子をと考え始めた33歳。なんと、今日子さんの会社が親会社と合併することが決まりました。会社の状況を見極める必要があった為、しばらく妊娠をお休みする事にした今日子さん。しかしここで想定外の出来事が。
あまり大きな影響は出ないと楽観的に考えていたのですが、実際には経営陣の交代、人事制度の変更、組織異動等が時間をかけてジワジワと発生。特に組織変更については2回も発生し、その度に「異動直後は部署に迷惑をかけられない。妊活は異動先で頑張ってから。」と思っていたそうです。そういった仕事に対する責任感も妊活にブレーキをかける結果となっていました。
※復職直後は仕事に集中したので1年お休み
※会社合併に伴う諸問題が落ち着くまで、2年お休み

35歳、思い切って転職を決意

今日子さんは合併に関するゴタゴタが一向に収まらない事に業煮やし遂に転職を決意。やはり転職直後はまずは結果を出さなければと考え、一生懸命働きました。そして2年後、やっと自分の中で決意がついた今日子さんは既に37歳になっていました。
※転職により2年お休み

38歳、不妊治療終盤で、子宮内膜症・子宮腺筋症の治療優先へ

タイミング→体外受精と順調にステップを踏んできた今日子さん。子宮内膜症・腺筋症の持病があったため早く体外受精に進みたいという希望もありましたが、人工受精は6回が目安という推奨を受け、医師の言われる通りにステップを踏んでいきます。
しかし回数を重ねても妊娠することは出来ませんでした。遂に体外受精を開始し、あらかじめ夫婦で決めていた体外受精の回数を2回に残した時になり、「何か出来る事はないか」と医師に聞いてみたところ「そもそも子宮腺筋症の治療をした方がいいかもしれない」と治療を勧められるのです。
※不妊治療クリニック通院:1.5年

流産・早産率70%、衝撃の事実を知る

そうして門を叩いた大学病院。今まで今日子さんには「子宮腺筋症は妊娠しにくい」という漠然とした知識しかなかったのですが、そこで教えてもらった事は、子宮腺筋症患者の流産率・早産率でした。

今まで今日子さんは妊娠=ゴールと考えていましたが、折角妊娠をしても子供を安全な周期(=正産期、妊娠37週以降での出産。赤ちゃんが安心して母体から出て、外の環境に適応できる状態)で出産できる率はたったの30%しかなかったのです。(通院していた病院内データ。一般的なデータではありません。)
早産は、赤ちゃんが外で適応できる能力を備える前に生まれてしまう事をいい、出産時の週数によりパーセンテージは大きく違いますが、障害などが残る可能性があります。
今日子さんは知らなかった事とはいえ、まだ見ぬ我が子を流産や早産のリスクにさらして不妊治療をしていた事に激しいショックを受けました。

既に8年の月日がたっていた

今日子さんは不妊治療を一旦お休みし、子宮腺筋症の手術に集中する事を決意。しかし、手術は数か月待ち、更に術後は半年程度の経過観察が必要なため、すぐに不妊治療を再開することが出来ません。
今日子さんが術後回復し妊活許可がでた時には、既に第一子出産から8年の年月が流れていました。

今日子さんは、どうすればよかったのか?

疾患の有無にかかわらず、39歳女性が体外受精などの生殖医療を受けた場合の正産率をご存知でしょうか?なんと、わずか10.2%しかありません。(2010年日本生殖医学会調査

不妊治療を再開した今日子さんですが、果たして残された2回の体外受精で、無事妊娠・出産をして赤ちゃんを抱くことは出来るのでしょうか?

ここで、今日子さんはどうするべきだったのか、そのターニングポイントを考えてみましょう。

1) 医師からきちんと情報収集をするべきだった

以前からネットや本で病気に関する情報は一通り集めていた今日子さん。病気に関する知識は一通り持っていると思っていました。しかしネットや本では病気についての基本的な知識しか載っていません。

例えば今回の今日子さんの件を例にとると、「子宮腺筋症には早産の可能性が」という事実はインターネット検索をするとすぐに発見することが出来ます。しかし、医師に詳しく聞く事で「流産・早産の可能性が70%あり、正産期に生まれてくる率は僅か30%です。早産では生まれてくる子供に障害など様々なリスクをもたらします。」と聞くのでは、全く違います。今日子さんは医師とのコミュニケーションに苦手意識を持っていたこともあり、中々質問が出来なかったようです。

しかし、もし今日子さんがもっと早くから病気に関するデータや最新の医療情報(治療成績データや昨今のトレンド)をヒアリングしていたら、子宮腺筋症治療を終わらせ万全の状態にしてから不妊治療を開始する、など別の妊娠計画を立てていたはずです。

2)不妊治療は魔法の杖ではない

タイミング、人工授精、体外受精とステップを進めていった今日子さん。第一子を出産していたこともあり、心のどこかで「仕事優先で産み時を遅らせても、高いお金を払って不妊治療さえすれば妊娠できるだろう」と思っていました。
しかし、不妊治療は魔法の杖ではありません。年を取れば妊娠しにくくなりますし、流産率も上がります。どんなに医療が進んでも人間の生殖機能そのものを若返らせることは出来ない。そんな簡単な事すら、時間とお金を投資すれば解決できる問題だと考えていたのです。

3) 自分の妊活計画をシビアにマネジメントするべきだった

会社の状況に応じて妊活を先延ばしした今日子さん。会社合併はまれなケースですが、仕事を持っている女性であれば誰しも、仕事と産み時の狭間で悩むのではないでしょうか。

・あと少し頑張れば昇格できそう
・部署異動の都合で当面は離れなれない
・今の仕事をできるのは自分しかいない。
・大きなプロジェクトに入っていて、終了は2年後だ
・転職したい
・夫の親の介護が必要になった

今はどこの会社も人材不足の時代。一人ひとりの働き手に多くの責任がのしかかってくる構造は変わらず、今後も産み時の選択では多くの女性が苦悩するでしょう。
しかし、そういったキャリアイベントはあなたの時間を年単位で奪っていきます。仕事の時間軸で産み時を考えると、今日子さんの様に「気が付いたら8年経過していた」という事は他人事ではありません。

「仕事での責任感を持つことも大切だが、よりシビアに情報収集して自分の妊娠計画をマネジメントし、妊娠をしても会社に迷惑をかけないように仕事の工夫する努力をするべきだった」と今日子さんは言います。

最後に、今日子さんは自分の経験を通しこう訴えます。「保育園に入れず育休を1年半も取得したり、異動や転職で妊活が出来なかった事を当初は想定外の出来事として捉えていた。  しかしそれらは仕事をしている以上、容易に想像できる「あるある」ばかりだった。これから疾患治療や妊活に当たる女性には、少しでも手堅い将来設計して欲しい。」